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「蜃気楼」(しんきろう)は、芥川龍之介の短編小説。初出は『婦人公論』1927年3月号。芥川が自殺する半年前に書かれた作品で、当時芥川をはじめとした文学者たちが逗留することで知られた〔篠崎 2005年, p. 98〕湘南の鵠沼を舞台とし、主人公の「僕」が「芋粥」という短編を書いているなど私小説的な雰囲気が色濃い。また志賀直哉の『焚火』の影響を受けているという指摘が複数ある〔田代 2000年, p. 137〕。 副題は「或は『続海のほとり』」。『海のほとり』は1925年の芥川の短編で、やはり「僕」が友人と海辺をふらつくという物語である。 この晩年の掌編はごく短いものであるが「歯車」などに劣らぬ数の評論が書かれており、三島由紀夫もこの作品を「不思議と」好む人間の多いことを記している〔小林 1996年, p. 43〕。 ==あらすじ== 「僕」は友人たちとともに蜃気楼を眺めに鵠沼の海岸に出かける。しかし期待していた蜃気楼は見えず、ただ砂の上に青いものがゆらめいているだけだった。海は晴れていたが、空気は重く、どこかしら陰鬱だった。失望した「僕」たちは海辺の男女にも不気味なものを感じ、日の光にも不気味さを覚える。そぞろに歩いていた友人の一人がふと目についた木札を拾い上げる。それは水葬した亡骸につけられていた認識票がわりの十字架らしく、三人はそれを見つめながら海の上で亡くなった人に思いを巡らせるのだった。 友人のつぶやきが妙に心にひっかかりながらも、その日は何をするでもなくそのまま「僕」たちは別れた。 次の日も「僕」は友人と妻を連れて浜辺に出かけた。海は暗く、星もないなかでまた「僕」は不気味さを覚える。とりとめない話をしながら歩いていると今度は土左衛門の足らしきものが見つかったが、実はただ靴が砂に埋まっているだけだった。居合わせた男のネクタイピンが気になる「僕」だったが、それも巻き煙草を勘違いしたもので、妻は笑いをこらえる。しかし出来事といえばこの程度で、この日も何が起こるわけでもなく三人は家路に着いたのだった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「蜃気楼 (小説)」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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